散歩がてらに近所を歩いていると、桜が満開でとても綺麗でした。職業柄、樹を観察するクセがついてるみたいで花を楽しむというより、樹形や切り方などに目がいってしまいます。
タイムリーに先日、TVでやっていた桜移植とお客様から伺ったことを、僕の感想と職人としての考えを書こうとおもいます。
「ダムに沈んだ村の荘川桜を移植する人たち」の話
電力確保の為のダム建設の為に立ち退きを余儀なくされた村、その村の古木の彼岸桜を残すために移植をする。
村民の方たちや電力会社の社長の想い、当時誰もが不可能だと考えていたその移植を実現するために、植木職人が当時では誰も考えなかった方法や、想像を絶する苦労話を伝えていたと思います。
とても興味深い話が多く、人力で根を傷付けずに手掘りすることや、切り口にコールタールを塗布し防腐剤代わりに使用していたという当時の発想などは、桜の繊細さを誰より理解している職人さんの技術や想いが詰まっていたエピソードだと思いました。
そんな丁寧な作業の結果、今も元気にたくさんの花を咲かせているそうです。
ある植木屋さんのお客様への対応を聞いて
桜を切って欲しいというお客様宅へお伺いしたときの話。
ウチの前に依頼した植木屋に「桜切りません」って言われたそうです。「枯れても責任取れませんから」だそうです。確かに生き物ですから「枯れる」ことはあるかも知れませんが、それはどんな樹木にもいえることです。
本当の職人なら「お客様の要望に応える」ことをまずは考え行動するはず。「出来ません」なら誰にでも言えること。シルバー人材センターの研修のおじいちゃんでも言える。
誰でも切ることはできる
桜に限らず木は誰でも切ることはできますが、適切な時期や切り方・後の対処が出来るかどうかがプロかどうかの違いでしょう。
たとえば、僕らはこんなことをしています。
- バークリッジ剪定法
- 殺菌剤・癒合剤の使用
バークリッジ剪定法というのは
Alex L Shigoというアメリカの博士が提唱したCompartmentalization of decay in treesと呼ばれる理論をもとにした剪定方法のことです。
樹木は切った枝を保護しようと自身で癒合しようとするので、それに適した切り方をすること、それがバークリッジ剪定法です。要するに「木にやさしい剪定技術」ということです。詳細については下記wikiを参考にして下さい。
殺菌癒合剤で切り口の保護を
樹木は切り口から侵入した腐朽菌によって枯れこむことが多いために、先ほどのバークリッジ剪定法を用いて適切な位置で枝を切ります。
そして重要なのが、殺菌癒合促進剤を塗ることです。保護するだけの癒合剤もありますが、殺菌と癒合を同時に行えるトップジン M ペーストがおすすめです。
切り口にふたをするようにペーストを塗りこみます、そのとき傷が見えないようにして塗布する事がポイントです。
まとめ
一般的に難しいといわれている桜を切る行為。
リスクを少なくするためには大木になる前から、太い枝を切ることを少なくすること、また枯れ枝や不要枝もしっかり切っていくこと。
すなわち、正しい剪定技術で、樹木に負担をかけないよう維持管理することで、桜切る馬鹿は回避できることと思います。
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